接吻
(くちづけ) 

作者名  北原白秋 (1885-1942)
作品名  接吻
制作年代  
収載書名  思ひ出
刊行年代  1911
 その他  


臭の深き女來て
身軆
(からだ)も熱くすりよりぬ。
そのとき、そばの車百合
赤く逆上
(のぼ)せて、きらきらと
蜻蜓
(とんぼ)動かず、風吹かず、
後退
(あとし)ざりつつ恐るれば、
汗ばみし手はまた強く
つと抱きあげて接吻
(くちづ)けぬ。
くるしさ。つらさ。なつかしさ。
草は萎れて、きりぎりす、
暑き夕日にはねかへる。
 


 詠いこまれた花   クルマユリ

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